お客様からのご相談
【神奈川県横浜市・S.Y様(30代・ご夫婦)】
はじめまして。築12年の洋風の一戸建てに住んでいます。そろそろ外壁塗装の時期で、業者さんとも打ち合わせを始めたところです。
せっかく塗り替えるのだから、ただ家を長持ちさせるだけでなく、カフェみたいなおしゃれな外観にしたいね、と夫婦で夢を膨らませていました。…しかし、いざ色選びの段階になった途端、完全に手詰まり状態です。
業者さんから渡された分厚い色見本帳は、一つ一つの色が小さすぎて、家全体に塗られた時の姿が全く想像できません。夫は「長く住むんだから、汚れが目立たないグレーやベージュがいい」と現実的なのですが、私はもう少し明るくて可愛い色合いに憧れがあります。
おしゃれなツートンカラーにも挑戦したいのですが、配色のセンスに自信がなく、ご近所から浮いてしまうようなチグハグな家になったらどうしよう…と不安です。ネットで調べると「面積効果」とかいう難しい言葉も出てきて、ますます混乱しています。
カラーシミュレーションも作ってもらいましたが、パソコンの画面と実際の色は違うと聞き、どこまで信じていいものか…。
一生に数えるほどしかない大きなリフォームで、「こんなはずじゃなかった…」と色選びで後悔することだけは、絶対に避けたいです。どうか、私たちのような素人でも失敗しない、色選びの具体的なコツを教えてください!
AI館長・塗田がお答えします!
S.Y様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。
色選び、外壁塗装のプロセスの中で、一番ワクワクする時間であり、同時に、一番頭を悩ませる時間ですよね。お気持ち、とてもよく分かります。
「この小さな四角いチップが、家全体になったらどんな表情を見せるんだろう?」
「私たちの理想と、ご近所との調和、両方を叶える色って…?」
小さな色見本から、太陽の下で輝く我が家の姿を正確に想像するのは、私たちプロにとっても至難の業です。S.Y様ご夫妻が悩まれるのは、至極当然のことなんですよ。
ですが、ご安心ください。色選びでよくある失敗は、実は色の持ついくつかの「性質」を知らないことが原因で起こる場合がほとんどです。これからお話しするいくつかのポイントを押さえれば、S.Y様ご夫妻の「理想の我が家」の色を、自信を持って選べるようになります。一緒に、後悔しない色選びの冒険に出かけましょう!
なぜ?「色見本とイメージが違う」最大の原因、“面積効果”とは
「色見本で見たときは素敵だったのに、実際に塗られたら、なんだか白っぽくて落ち着かない…」
これは、色選びにおける最も代表的な失敗談です。その原因のほとんどが、目の錯覚の一種である**「面積効果(めんせきこうか)」**という現象にあります。
- 面積効果とは?同じ色でも、面積が大きくなればなるほど、色はより「明るく」、そしてより「鮮やか」に見える現象のことです。
例えるなら、文房具屋さんで見た1本のカラーペンの色と、そのペンで画用紙全体を塗りつぶした時の色が、なんだか違って見える感覚に似ています。面積が大きくなると、色が持つパワーが増幅されて、私たちの目に飛び込んでくる情報量が変わるのです。
では、どうすればこの面積効果を攻略できるのか。方法は意外とシンプルです。
【攻略法】
色見本帳で「これだ!」と直感で思った色よりも、“ワントーン暗い色”、あるいは**“ワントーン彩度が低い(落ち着いた)色”**を選んでみてください。
「少し地味かな?」と感じるくらいの色が、実際に家全体に塗られた時には、ちょうどイメージ通りの明るさや鮮やかさになることが多いのです。
汚れが目立たないのは何色?メンテナンスが楽な人気カラー
次に、ご主人が気にされている「汚れが目立たない色」についてです。これは、見た目のおしゃれさと同じくらい、長く快適に暮らすために重要な視点ですよね。
まず、外壁の「汚れ」の正体を考えてみましょう。それは、風で飛んでくる砂や土埃、雨だれ跡、車の排気ガスなどが混じったものです。これらの汚れは、真っ黒でも真っ白でもなく、**「薄いブラウン」や「黄褐色」「グレー」といった、いわゆる“中間色”**をしています。
もうお分かりですね。汚れそのものの色に近い色を選べば、汚れが付着しても目立ちにくい、というわけです。
- 汚れが目立ちにくい、おすすめの色
- グレー系: 最も汚れが目立ちにくく、どんなデザインの家にも合う万能カラー。スタイリッシュで都会的な印象になります。
- アイボリー・ベージュ系: 温かみがあり、優しい印象を与えます。洋風・和風問わずマッチする人気の定番色です。
- 薄いブラウン系: 落ち着きがあり、ナチュラルで安心感のある外観になります。
- 逆に、汚れが目立ちやすい色
- 真っ白: 雨だれによる黒っぽい筋汚れや、カビ・コケが目立ちやすいです。
- 真っ黒: 砂埃や鳥のフンなど、白っぽい汚れが非常に目立ちます。
- 鮮やかな原色(赤・青・緑など): 汚れもさることながら、紫外線による「色褪せ」が他の色より目立ちやすい傾向があります。
“A4サイズ以上の塗り板”で、太陽の下で最終確認を!
面積効果を理解し、汚れにくい色も分かった。では、最終決定はどうすればいいのか。
カラーシミュレーションはあくまでイメージを掴むためのもの。小さな色見本は論外。
私が最もお勧めする、そして絶対にやっていただきたい最終確認の方法が、**「A4サイズ以上の塗り板(ぬりいた)」**を作ってもらうことです。
これは、実際の外壁材、あるいはそれに近い板に、検討している塗料を本当に塗ってもらったサンプルです。優良な業者さんなら、お客様に後悔させないために、この「塗り板」の作成に協力してくれます。
この塗り板を手にしたら、以下の方法でチェックしてください。
- 必ず「屋外」で見る: ショールームの蛍光灯の下と、自然の太陽光の下とでは、色の見え方が全く違います。
- 時間と天気を変えて見る: 「晴れた日の午前10時」「曇りの日の午後3時」など、条件を変えて何度も確認しましょう。光の当たり方で見え方は激変します。
- 実際に家の壁に「立てかけて」見る: 北側の影になる面と、南側の日が当たる面では、同じ色でも濃淡が違って見えます。必ず両方の壁に当てて、その表情の違いを確認してください。
おしゃれな「ツートンカラー」を成功させる黄金比
最後に、奥様が憧れているツートンカラーを成功させる秘訣です。センスに自信がなくても、いくつかのルールを知っていれば、誰でも調和の取れたおしゃれな配色ができますよ。
- 「70:25:5の法則」を意識するこれは、空間をおしゃれに見せる配色の黄金比です。
- ベースカラー(70%): 最も面積の広い、家の大部分を占める色。
- アソートカラー(25%): ベースカラーを引き立てる2番目の色。1階と2階で分ける場合や、ベランダ部分だけ色を変える場合などがこれにあたります。
- アクセントカラー(5%): 玄関ドアや窓枠、雨樋など、全体を引き締める差し色。
このバランスを意識するだけで、まとまりのある配色になります。
- 失敗しない色の組み合わせ方
- 同系色でまとめる: 最も簡単で失敗がないのが、同じ色相で明るさだけが違う色(例:濃いベージュと薄いベージュ)を組み合わせる方法です。上品で落ち着いた印象になります。
- セパレーションカラーを上手に使う: 1階と2階を分ける「幕板(まくいた)」や、サッシの色(白・黒・シルバーなど)を意識しましょう。この区切り線があることで、全く違う色同士でも不思議とまとまりが生まれます。
色選びは、パズルのようで、お洋服のコーディネートのようでもあります。今回ご紹介した知識を武器に、ぜひご夫婦で楽しみながら、「我が家だけの色」を見つけるプロセスを味わってください。その先に、毎日家に帰るのが楽しみになるような、愛着の湧く我が家の新しい姿が待っていますよ。

