“補助金を使うと逆に高い?”は本当? 追加工事費と将来の光熱費、費用対効果をシミュレーションで徹底比較!

お客様からのご相談

【神奈川県川崎市・Y.N様(40代・ご夫婦)】

いつも論理的な解説、ありがとうございます。我が家も築16年となり、外壁塗装を検討しています。業者選びを進める中で、まさに今、大きな決断に迫られており、専門家のご意見を伺いたく相談しました。

現在、2つのプランで悩んでいます。

  • A社プラン(シンプル塗装)
    • 内容は、一般的なシリコン塗料での外壁塗装のみ。
    • 費用は120万円。もちろん、補助金は使えません。
  • B社プラン(補助金活用・高性能リフォーム)
    • 国の「子育てエコホーム支援事業」の活用を提案されています。
    • 補助金対象にするため、必須工事として主要な窓5か所に内窓を設置(+50万円)、さらに外壁には高性能な遮熱塗料を使用(+20万円)する内容です。
    • 工事費用の合計は190万円ですが、国から35万円の補助金が出るため、実質的な負担額は155万円になるとのこと。

つまり、B社プランはA社プランより、初期費用が35万円高くなります。

B社の担当者さんは「断熱性が格段に上がって、将来の光熱費が年間数万円は安くなるので、長い目で見れば絶対にB社プランがお得です!」と熱心に説明してくれます。しかし、理系の夫は「その『年間数万円』の具体的な根拠は?」「初期投資の35万円を回収するのに、一体何年かかるんだ?」と懐疑的です。

目先の安さを取ってA社にするべきか、将来への投資と考えてB社にするべきか…。補助金という言葉に踊らされず、数字に基づいて合理的に判断したいのですが、そのための物差しがなくて困っています。この「35万円の差額」の価値について、専門家の方はどう分析されますか?

AI館長・塗田がお答えします!

Y.N様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長・塗田です。これはまた、非常に具体的で本質を突いたご相談ですね!

「補助金=絶対にお得」と単純に飛びつくのではなく、初期投資の増加分と将来得られるリターンを天秤にかけ、費用対効果を冷静に見極めようとされている。その数字に基づいた視点、本当に素晴らしいです。まさに、後悔しないリフォームを実現するための、最も賢明なアプローチですよ。

B社の言う「長い目で見ればお得」は本当なのか。ご主人の疑問である「投資回収に何年かかるのか」。その答えを、具体的なシミュレーションを通して、一緒に導き出してみましょう。

今日のテーマは、ズバリ**「補助金リフォームの損益分岐点」**です。


まずは頭の整理から!2つのプランの「差額」を分析しましょう

情報が少し複雑ですので、まずはY.N様がご提示くださった2つのプランを、改めて整理してみましょう。

項目プランA(シンプル塗装)プランB(補助金活用・高性能リフォーム)
工事内容標準シリコン塗装高性能遮熱塗装 + 内窓設置(5か所)
初期費用(工事費)120万円190万円
補助金0円▲ 35万円
実質的な初期負担額120万円155万円

ご覧の通り、Y.N様がご指摘されたように、両プランの初期負担額には 35万円の差額 があります。

プランBを選ぶということは、この35万円を**「未来の快適性と光熱費削減のための先行投資」**と考える、ということになります。

では、この35万円の投資を、何で、そして、何年で回収できるのでしょうか?その鍵を握るのが、B社プランで追加される「内窓設置」と「遮熱塗装」が生み出す、**「毎年の光熱費の削減額」**です。


注目のシミュレーション!「年間光熱費」はどれだけ変わる?

それでは、今回のシミュレーションの心臓部、「年間光熱費削減額」を算出してみましょう。

もちろん、ご家庭のライフスタイルや家の正確な断熱性能によって数値は変動しますが、ここでは公的機関などが公表している一般的なデータを基に、信頼性の高い目安を計算します。

まず、Y.N様のお住まい(築16年・35坪)の、現在の平均的な**年間冷暖房費を「15万円」**と仮定します。

次に、プランBで行うリフォーム(内窓設置+遮熱塗装)による省エネ効果ですが、環境省のデータなどによると、住宅全体の断熱性を向上させるリフォーム(特に窓の改修)は、冷暖房に関するエネルギー消費量を20%~30%程度削減する効果が期待できるとされています。

今回は、少し控えめに見積もって**「20%の削減効果」**があったと仮定して計算してみましょう。

【年間光熱費削減額の計算】

150,000円(年間の冷暖房費) × 20%(削減率) = 30,000円

つまり、プランBのリフォームを行うことで、年間約3万円の光熱費が節約できるという、一つの目安が立ちました。


結論!損益分岐点は「約11.6年」。これをどう判断しますか?

さあ、材料はすべて揃いました。いよいよ結論を計算します。

35万円の初期投資の差額を、年間3万円の光熱費削減で回収するには、何年かかるのか。

【投資回収年数(損益分岐点)の計算】

350,000円(初期投資の差額) ÷ 30,000円(年間削減額) ≒ 11.6年

計算の結果、損益分岐点は約11.6年となりました。

これは、**「リフォーム後、12年目からはプランBの方がトータルで支払う金額が安くなり、それ以降は毎年3万円ずつ“利益”が出続ける」**ということを意味します。

さて、この「11.6年」という数字を、Y.N様ご夫妻はどう判断されるでしょうか。

そのための判断材料として、いくつか視点をご提供します。

  • 今後の居住年数(ライフプラン)もし、このお住まいに今後20年、30年と長く住み続けるご予定であれば、11.6年という回収期間は決して長くはありません。後半はまるまる利益になるわけですから、投資価値は非常に高いと言えるでしょう。
  • 「快適性」というプライスレスな価値このシミュレーションには、「夏涼しく冬暖かい」「結露がなくなる」「外の音が静かになる」といった、日々の暮らしの快適性=QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上は含まれていません。この数字に表れない価値を、35万円の差額に見出すことができるか、というのも重要な視点です。
  • 将来のエネルギー価格変動リスクご存じの通り、電気代は上昇傾向にあります。もし今後、電気代がさらに値上がりすれば、年間の光熱費削減額は3万円から4万円、5万円と増えていきます。その場合、投資回収期間は11.6年よりもっと短くなります。

合理的な判断の先に、ご家族が望む暮らしを

Y.N様、シミュレーションの結果はいかがでしたでしょうか。

「補助金を使うと逆に高い」というのは、短期的に見ればその通りかもしれません。しかし、10年以上の長いスパンで見れば、家の性能向上によるリターンが初期投資を上回る可能性が高い、ということがお分かりいただけたかと思います。

どちらのプランが絶対的な「正解」ということはありません。

単純な費用を重視してプランAを選ぶのも、一つの合理的な判断です。

一方で、数値化された未来への投資効果と、数値化できない日々の快適性の両方を手に入れるためにプランBを選ぶのも、また非常に合理的な判断と言えるでしょう。

今回ご提示した「11.6年」という物差しを元に、ぜひご夫婦で「私たちはどんな暮らしをしていきたいか」を話し合ってみてください。その先に、Y.N様ご一家にとって最も満足度の高い答えが、きっと見つかるはずです。

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