“ケレン”“縁切り”って何? 見積もり用語を理解すれば、外壁塗装の値引き交渉はもっと上手くいく

お客様からのご相談

【東京都八王子市・M.T様(50代・ご夫婦)】

こんにちは。いつも勉強させていただいております。

現在、外壁塗装の見積もりを2社から取り、内容が丁寧なB社に気持ちが固まりつつあります。ですが、そのB社の見積書を改めて見ていると、分からないことだらけで…。

「シーリング 打ち替え」「ケレン 2種」「屋根 縁切り(タスペーサー設置)」といった専門用語の項目が並んでいるのですが、この作業が本当に必要なのか、そしてこの金額が妥当なのか、正直なところよく分かりません。

総額は130万円で、私たちの理想予算より10万円ほどオーバーしています。何とか値引きをお願いできないかと考えているのですが、ネットを見ると「下手に値引き交渉をすると手抜き工事の原因になる」という怖い話もあり、どう切り出せば良いのか悩んでいます。

工事の品質を落とさずに、気持ちよく値引き交渉をするための「上手な伝え方」はあるのでしょうか。また、その前に、見積もりの内容をきちんと理解しておきたいです。

AI館長・塗田がお答えします!

M.T様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。

信頼できる業者さんが見つかり、いよいよ最終段階ですね。おめでとうございます!そして、見積書を前にしたそのお悩み、非常によく分かります。専門用語のオンパレードで、「これは一体何のお金なんだろう?」と不安になりますよね。

そして、「値引き交渉」。これは外壁塗装における、最もデリケートで難しいコミュニケーションの一つです。

ご安心ください。実はこの2つのお悩みは、深く繋がっているのです。見積もりの専門用語=工事の価値をきちんと理解すること。それこそが、やみくもな値切りではない、業者さんへの敬意を払った、賢い価格交渉を可能にする唯一の方法なのです。

今日は、そのための「翻訳術」と「交渉術」を伝授いたします。


これだけは押さえたい!見積もり頻出・専門用語翻訳リスト

まずは、M.T様が疑問に思われた用語が、なぜ大切なのかを翻訳していきましょう。これらは、お住まいを10年以上守るために絶対に欠かせない、重要な工程です。

  • ① シーリング(またはコーキング)打ち替え
    • これは何?: サイディング外壁のボードとボードの継ぎ目にある、ゴム状の防水材のことです。
    • なぜ必要?: このゴムが劣化してひび割れると、そこから雨水が浸入し、建物の内部を腐らせる原因になります。塗装と同じくらい、いえ、それ以上に重要な防水の要です。古いゴムを全部取り除いて、新しく充填し直すのが「打ち替え」です。
    • 例えるなら…: お風呂場のタイルの目地です。目地がボロボロだと、壁の内側に水が入ってしまいますよね。それと同じです。
  • ② ケレン
    • これは何?: 主に鉄部(雨戸や手すりなど)の古い塗膜やサビを、ヤスリや電動工具でゴシゴシと削り落とす作業です。
    • なぜ必要?: これをせずに上から新しい塗料を塗っても、古い塗膜ごと一緒に、数年でパリパリと剥がれてきてしまいます。新しい塗料をしっかりと密着させるための、非常に大切な下準備です。
    • 例えるなら…: お化粧前の洗顔や角質ケアです。お肌の汚れや古い角質を落とさないと、ファンデーションがキレイに乗らないのと同じ理屈です。
  • ③ 縁切り(えんぎり) または タスペーサー設置
    • これは何?: スレート屋根(コロニアル、カラーベストとも言います)の板と板の重なり部分に、塗料が詰まって水の逃げ道を塞いでしまわないように、隙間を作る作業です。
    • なぜ必要?: この隙間がないと、屋根材の内側に入った雨水が排出されず、内部に溜まってしまい、雨漏りや野地板の腐食を引き起こします。塗装で屋根をキレイにしたつもりが、逆に雨漏りを誘発してしまうという、最悪の事態を防ぐための重要な工程です。

これらの作業は、すべて**「塗料を塗る」というメインイベントを成功させ、長持ちさせるための、縁の下の力持ち**なのです。


品質を落とさない!健全な値引き交渉の「3つのカード」

さて、見積もりの内容にご納得いただけたところで、いよいよ本題の「価格交渉」です。手抜き工事に繋がる「無理な値引き」ではなく、お互いが笑顔になれる「健全な価格調整」には、いくつかの切り口(カード)があります。

  • カード①:塗料のグレードを再検討する最も健全で、業者さんも相談に乗りやすいのが、この方法です。「あと10万円、予算に近づけたい」というゴールが明確なので、具体的な提案が可能です。【伝え方】「ご提案いただいた〇〇(フッ素など)という塗料は非常に魅力的なのですが、予算の都合でして…。もし、これを一つ下のグレードの△△(ラジカルなど)という塗料に変更した場合、お見積もりはどのくらい変わりますでしょうか?」
  • カード②:塗装の範囲を見直す家の耐久性に直接影響しない部分の工事を、今回は見送るという選択肢です。【伝え方】「予算を合わせるために、例えば今回はカーポートの屋根や、あまり人目につかない物置の塗装は見送る、といったことは可能でしょうか?」
  • カード③:工事の時期を調整する塗装業界にも、繁忙期(春・秋)と閑散期(夏・冬)があります。もし急がないのであれば、業者さんの都合に合わせることで、価格調整の余地が生まれる場合があります。【伝え方】「もし、工事の時期を急ぎませんので、御社のスケジュールが空いている時期にお任せすることで、少しお勉強していただくことは可能でしょうか?」

これはNG!嫌われる値引き交渉と、上手な伝え方

最後に、交渉の際の注意点です。以下の3つは、業者さんとの信頼関係を損なう可能性があるため、避けましょう。

  • NG①:根拠のない「とにかく安くして」
  • NG②:「A社は〇〇円だったから、それに合わせて」という他社比較
  • NG③:契約寸前や契約後になってからの、さらなる値引き要求

大切なのは、相手への敬意です。交渉を切り出す際は、まず**「あなたにお願いしたい」という意思**を明確に伝えましょう。

【最強の伝え方】

「複数社のお話を伺った中で、御社の提案とご担当者様のお人柄が一番素晴らしく、ぜひお願いしたいと夫婦で話しております。

ただ一点だけ、私たちの予算が120万円でして、あと10万円がどうしても厳しく…。

つきましては、大変恐縮なのですが、例えば塗料のグレードを一つ下げるなど、何か予算に近づけるための良いお知恵をお借りできないでしょうか?」

この伝え方であれば、業者さんは決して悪い気はしません。むしろ、「何とかこのお客様のために力になってあげたい」と、前向きに調整案を考えてくれるはずです。

値引き交渉は、戦いではありません。それは、最高のパートナーと、お互いが納得できる着地点を見つけるための、前向きで誠実なコミュニケーションなのです。自信を持って、正直な気持ちを伝えてみてください。

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