ピカピカの“艶有り”は安っぽい?おしゃれな“艶消し”は汚れる?外壁塗装、最後の失敗は「艶選び」だった

お客様からのご相談

【千葉県船橋市・A.S様(30代・ご夫婦)】

はじめまして。我が家は築12年のシンプルなデザインの家で、今回が初めての外壁塗装です。業者さんも決まり、色も夫婦で悩みに悩んで、おしゃれなダークグレーにすることに決めました。

ところが、最終的な仕様を決める打ち合わせで、担当者さんから「塗料の艶(つや)はどうされますか?艶有り、5分艶、3分艶、艶消しなどがありますが…」と、全く予想していなかった質問をされたのです。

見せられたカタログの小さなサンプルでは、その違いがよく分かりません。担当者さんは「一番長持ちして汚れも付きにくいので、基本的には艶有りがおすすめですよ」とおっしゃいます。

でも、私たちがイメージしていたのは、落ち着いたマットな質感の、シックな雰囲気なんです。ピカピカに光るダークグレーの外壁は、もしかすると安っぽく、悪目立ちしてしまうのではないかと、急に不安になってしまいました。

かといって、完全な艶消しにすると、今度は汚れが付きやすくて、せっかく塗り替えたのに数年で古びた印象になってしまうのではないか…という心配もあります。

性能と見た目のバランスを考えると、一体どの「艶」を選ぶのが正解なのでしょうか。

AI館長・塗田がお答えします!

A.S様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。

素晴らしい!そこまで細やかな感性で悩まれるからこそ、本当の意味で「理想の我が家」が完成するのですよ。色が決まり、ホッと一息ついたところでの「艶選び」という最後の関門。多くの方が、その存在に気づかずに業者さん任せにしてしまう中、A.S様がそこに疑問を持たれたのは、まさに成功への最終切符を手にしたようなものです。

おっしゃる通り、「艶」は、お住まいの印象を決定づける、最後の、そして最も重要な筆遣いと言っても過言ではありません。

担当者さんが勧める「機能性」と、A.S様ご夫妻が求める「デザイン性」。この二つを両立させる、最高の艶を見つける旅に、さっそく出かけましょう。


まずは基本から。艶の違いで「何が」変わるの?

塗料の艶は、光の反射率によって、主に以下の5段階に分かれています。

  • 艶有り(つやあり): 最もピカピカ。新品の自動車のような光沢。
  • 7分艶(しちぶつや): 艶有りより、少しだけ光沢が抑えられた状態。
  • 5分艶(ごぶつや)/半艶(はんつや): 落ち着いた上品な光沢。
  • 3分艶(さんぶつや): ほんのりと光を感じる、マットに近い質感。
  • 艶消し(つやけし): 光をほとんど反射しない、しっとりとしたマットな質感。

そして、艶の度合いによって、主に2つの性能が変わってきます。

  1. 機能性(耐久性・防汚性):一般的に、艶が強いほど、塗料の表面はツルツルになります。表面が滑らかであるほど、塗料の分子同士の結びつきが強く、汚れや紫外線を通しにくいため、耐久性が高く、汚れが付着しにくい傾向があります。雨で汚れが流れ落ちる「セルフクリーニング効果」も、艶有りの一番得意とするところです。
  2. 印象(見え方):艶が強いほど、光を強く反射し、色は鮮やかで明るく見えます。逆に、艶が引ける(弱くなる)ほど、光は拡散され、色は深く、しっとりと落ち着いた印象になります。

メリット・デメリットを徹底比較!あなたに合うのはどの艶?

A.S様ご夫妻の悩みを解決するため、それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。

艶有り(Glossy)

  • メリット: 耐久性・防汚性は最も高い。新築のような輝きが出る。
  • デメリット: 光沢が強すぎて「安っぽい」「落ち着かない」と感じる人も。特に濃い色では、壁の凹凸など下地の状態を拾いやすい。
  • こんな方へ: とにかく長持ちさせたい!メンテナンス性を最優先したい、という方。

3分艶~7分艶(Low to Semi-Gloss)

  • メリット: 機能性とデザイン性のバランスが最も良い。 適度な耐久性と防汚性を持ちながら、光沢が抑えられているため、上品で落ち着いた印象に仕上がる。
  • デメリット: 艶有りに比べると、わずかに耐久性は劣る。
  • こんな方へ: ほとんどの住宅、特にデザイン性を重視する方に、まずお勧めしたい選択肢です。 A.S様がイメージする、シックでモダンなダークグレーの外壁には、特に「3分艶」や「5分艶」が、高級感を演出しつつ、性能も確保できるベストバランスと言えるでしょう。

艶消し(Matte)

  • メリット: 圧倒的におしゃれで、高級感がある。和風建築や、デザイナーズ住宅のような、しっとりとした重厚感を表現できる。下地の凹凸が目立ちにくい。
  • デメリット: 表面に微細な凹凸があるため、汚れが付着しやすく、艶有りに比べて耐久性が低い。
  • こんな方へ: とにかく見た目のデザイン性を最優先したい!というこだわり派の方。

失敗しないための最終確認!「A4塗り板」で艶感を見比べよう

カタログの小さなチップでは、艶の本当の姿は絶対に分かりません。

そこで、以前の記事でもご紹介した**「塗り板(ぬりいた)」**の出番です。今回は、その応用編です。

業者さんに、**「同じ色(ダークグレー)で、艶だけが違う塗り板を3種類(例えば、艶有り・5分艶・3分艶)作ってもらえませんか?」**とお願いしてみてください。

信頼できる業者さんなら、お客様に後悔させないため、このひと手間を惜しまないはずです。

そして、その3枚の板を、必ずご自宅の外壁に当てて、こうチェックしてください。

  • 太陽が当たる南側の壁で、どう光るか?
  • 日陰になる北側の壁で、どんな深みを出すか?
  • 朝、昼、夕方と、光の角度でどう表情を変えるか?

これをすれば、ご夫妻がイメージする「理想の艶感」が、手に取るように分かります。パソコンの画面シミュレーションより、何倍も確実な方法です。

担当者さんが「艶有り」を勧めたのは、耐久性という機能面を最優先した、プロとしての誠実な意見です。一方で、A.S様ご夫妻が「マットな質感」を求めるのは、その家に住む人として、当然で、最も尊重されるべき感性です。

その両方を天秤にかけ、ご家族が「これこそ我が家だね」と心から微笑み合える、最高の艶を見つけてください。その最後のひと手間が、10年後の満足度を決定づけるのですから。

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