家の品格は“雨樋・軒天”で決まる。見積もりの「付帯部一式」で失敗しないための、色と塗料の正解

お客様からのご相談

【埼玉県さいたま市・M.O様(50代・ご夫婦)】

こんにちは。いつも詳細な解説をありがとうございます。

信頼できる業者さんと出会え、外壁の色や塗料も決まり、いよいよ契約という段階なのですが、最後の最後で、思わぬ落とし穴に気づいてしまいました。

それは、「付帯部(ふたいぶ)」の扱いです。

見積書には「付帯部塗装一式」としか書かれておらず、先日、担当者さんから「雨樋や破風板などの付帯部の色はどうされますか?白か黒か茶色あたりが一般的ですよ」と、何気なく聞かれたのです。

その時、ハッとしました。私たちは壁の色ばかりに気を取られ、雨樋や軒天(のきてん)、破風板(はふいた)といった細かい部分のことを、全く考えていなかったのです。

そもそも、これらの部分は素材もバラバラなはず。壁と同じ塗料を塗ってしまって良いのでしょうか。我が家には木製の部分もあるのですが、その風合いは残せないのでしょうか。

壁をどんなに綺麗に塗っても、この付帯部の仕上げが雑だと、家全体が安っぽく見えてしまうのではないかと、急に心配になってきました。「一式」という言葉の曖昧さも気になります。

家の仕上がりを左右する、これらの重要な脇役たちについて、正しい知識と、後悔しないための指定の仕方を教えてください。

AI館長・塗田がお答えします!

M.O様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。

素晴らしい!そのご慧眼、まさにプロの視点です。多くの方が壁という「主役」にばかり目を奪われがちですが、M.O様がお気づきの通り、お住まいの最終的な「品格」や「美しさ」は、雨樋や軒天といった、名脇役たちの仕上がりにかかっているのです。

「神は細部に宿る」と申します。

お洋服で例えるなら、外壁がドレスやスーツ。そして付帯部は、それに合わせる靴やベルト、ネクタイです。この小物選びを間違えると、どんなに高級なスーツも台無しになってしまいますよね。

見積もりの「一式」という言葉に安心せず、その細部にまでこだわろうとされるM.O様の姿勢があれば、必ずや完璧な仕上がりを実現できます。さあ、一緒に最高のコーディネートを完成させましょう。


まずは用語解説!「付帯部」とは、具体的にどこのこと?

おっしゃる通り、お住まいには壁と屋根以外にも、塗装が必要な様々なパーツがあります。まずは、主な付帯部の名称と役割を確認しましょう。

  • 雨樋(あまどい): 屋根からの雨水を集めて、地面に排水する筒状の部材。【素材:塩化ビニル、金属など】
  • 軒天(のきてん): 屋根の裏側、外壁から突き出している部分の天井。【素材:木材、ケイカル板など】
  • 破風板・鼻隠し(はふいた・はなかくし): 屋根の先端(三角形の部分や、雨樋が付く横のライン)に付けられた板。【素材:木材、金属、窯業系など】
  • 雨戸・シャッターボックス: 窓の外側に設置された雨戸や、それを収納する箱。【素材:金属(スチール、アルミ)など】
  • 水切り(みずきり): 外壁の一番下や、窓の下などにある金属製の板。壁を伝う雨水を切り、土台への浸水を防ぎます。【素材:金属(ガルバリウム鋼板など)】

素材が違えば、塗料も違う。材質別のベストな選択

これらの付帯部は、それぞれ役割も違えば、素材もバラバラです。当然、塗るべき塗料も、それぞれ変えるのがプロの仕事です。壁と同じ塗料を何でもかんでも塗ってしまうのは、手抜き工事の典型例です。

  • 塩化ビニル製(雨樋など):プラスチックの一種なので、硬い塗料を塗ると素材のしなりに追従できず、ひび割れを起こします。柔軟性のあるウレタン塗料やシリコン塗料が適しています。
  • 金属製(破風板、雨戸、水切りなど):何よりも「サビ」が天敵です。塗装の前に、まずサビ止めの効果がある下塗り材を必ず塗る必要があります。その上で、耐久性の高いシリコン塗料などを塗るのが一般的です。
  • 木部(軒天、破風板など):木は呼吸(湿気を吸ったり吐いたり)しています。ペンキで塗りつぶしてしまうと呼吸ができなくなり、内部から腐ってしまうことがあります。木部専用の、通気性や防腐・防カビ性の高い塗料を選ぶ必要があります。木の風合いを残したい場合は、色が付いた透明な塗料(浸透性のある保護塗料)を選ぶことも可能です。

【チェックポイント】

信頼できる業者の見積もりは、付帯部の項目に「ケレン、サビ止め」といった下地処理が明記されていたり、塗料の種類が壁と違うものが指定されていたりします。もし全てが壁と同じ塗料なら、「付帯部の素材に合わせた塗料を使っていただけますか?」と必ず確認しましょう。


配色の黄金ルール。付帯部の色選び、3つのセオリー

付帯部の色選びは、家全体の印象を決定づける、非常に重要なデザイン作業です。失敗しないための、3つの基本的なセオリーをご紹介します。

  1. セオリー①:サッシの色に合わせる最も簡単で、失敗が絶対にない王道の法則です。日本の住宅の窓サッシは、白、黒、茶、シルバー(ステンカラー)がほとんどです。雨樋や破風板を、このサッシの色と統一することで、家全体にまとまりが生まれ、非常にスッキリと洗練された印象になります。
  2. セオリー②:外壁や屋根の色系統に合わせる付帯部を外壁の色と近い色にすると、付帯部の存在感が消え、建物全体が一体化した、シンプルでモダンな印象になります。逆に、屋根の色と近い色(例えば、黒い屋根に黒い雨樋)にすると、家の輪郭がはっきりとし、重厚感や安定感が生まれます。
  3. セオリー③:アクセントカラーとして「差し色」を使う少し上級者向けですが、付帯部を全く違う色にして、デザインのアクセントにする方法です。例えば、白い壁に、深い緑や青の雨樋を合わせるなど。成功すれば非常におしゃれですが、全体のバランスを考える高いデザイン感覚が求められます。

見積もりの「一式」を分解させる、契約前の最終確認

最後に、M.O様がご懸念の「付帯部一式」という曖昧な言葉を、契約前に具体的で明確な「約束」に変えるためのアクションプランです。

  • アクション①:工事範囲を文章化してもらう「この『付帯部一式』には、雨樋、軒天、破風板、鼻隠し、雨戸、シャッターボックス、水切りの塗装が全て含まれる、という認識でよろしいでしょうか?契約書にその旨を明記していただけますか?」と、はっきりと確認し、書面に残してもらいましょう。
  • アクション②:工程と塗料を確認する「これらの付帯部は、それぞれ素材に合わせた下地処理と下塗りを行った上で、2回塗り(または3回塗り)をしていただけますか?」と、工程を確認します。
  • アクション③:色を番号で指定する「雨樋と破風板の色は、このサッシの色に合わせて、日本塗料工業会の色見本番号でいうと『N-20』でお願いします」というように、必ず色番号で具体的に指定し、それを契約書や仕様書に記載してもらいましょう。

これらの確認作業は、業者を疑うためではありません。お互いの認識のズレをなくし、最高の仕上がりを共有するための、パートナーとしての共同作業なのです。

その細部へのこだわりが、10年後も「この家にして良かった」と思える、品格のある住まいを実現します。

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