お客様からのご相談
【群馬県高崎市・H.T様(40代・ご夫婦)】
こんにちは。築15年になる家の外壁塗装を考え、そろそろ見積もりを取ろうと思っていた矢先のことです。
先月、この地域をかなり強い台風が通過しました。幸い雨漏りなどはなかったのですが、先日、突然訪問販売の業者が来て、「この辺りを見て回っているのですが、台風のせいで屋根が傷んでいますよ。火災保険を使えば、自己負担なく無料で修理できます。申請は私たちが全てやりますから」と言われたのです。
あまりに話がうますぎて、少し怖いと感じ、丁重にお断りしました。
しかし、その言葉がずっと頭に残っています。本当に、火災保険を使って外壁や屋根の修理ができるものなのでしょうか?もしできるとして、うちの家の壁にある細かなひび割れや色褪せも「台風のせい」として申請して良いものなのでしょうか。
経年劣化を災害のせいにして申請するのは「保険金詐欺」になってしまうのではないかと怖いですし、かといって、本当に保険が使えるのに使わないのは損な気もします。
火災保険を使ったリフォームの、正しい手順と、悪質な業者に騙されないための注意点を、ぜひ教えていただきたいです。
AI館長・塗田がお答えします!
H.T様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。
それは、非常に悩ましい状況ですね。突然の訪問で「無料で直せる」と聞けば、心が揺れるのも当然です。しかし、同時に「そんなうまい話があるだろうか?」と疑う、H.T様のその慎重な姿勢、本当に素晴らしいです!その冷静な視点こそが、トラブルを未然に防ぐ最大の防御策なのですから。
結論から申し上げます。「台風などの自然災害で受けた損傷の修理に、火災保険が使える」というのは事実です。これは、保険契約者であるH.T様の、正当な権利です。
ただし、ここには絶対に越えてはならない、重要な一線があります。
火災保険は、あくまで災害による**「損傷の修理代」を補償するものであり、経年による「劣化の化粧直し代」**ではない、ということです。
今日は、この境界線を明確にし、H.T様が正しく権利を行使し、悪質な業者の罠に陥らないための、安全な道のりをご案内します。
大原則:「火災保険」は“修理代”であり、“お化粧代”ではない
まず、火災保険(多くの場合「住宅総合保険」)に含まれる**「風災・雹災・雪災補償」**が、今回のテーマの主役です。
【補償の対象となるもの(=損傷)】
◎ 台風の強風で、屋根のスレートが数枚割れた、飛んでいった
◎ 飛んできた瓦や木の枝が当たって、外壁にへこみや亀裂ができた
◎ 雹(ひょう)が降ってきて、雨樋に穴が開いた、変形した
→ このように、災害というイベントが直接的な原因で、それまで正常だったものが壊れた場合です。
【補償の対象とならないもの(=経年劣化)】
× 長年の紫外線や雨風による、塗料の色褪せ、チョーキング現象
× 建物が揺れることで生じる、避けられない細かなひび割れ(ヘアークラック)
× 日当たりが悪い場所に生える、コケやカビ、藻
→ このように、時間の経過とともに自然に発生する症状は、補償の対象外です。
例えるなら、自動車保険と同じです。誰かに車をぶつけられたら、へこみを直す修理代は保険で出ます(損傷)。しかし、古くなって色褪せたボディをピカピカに磨き直したり、エンジンオイルを交換したりする費用は、保険では出ません(経年劣化)。この線引きを、絶対に混同してはいけません。
これが正攻法!失敗しない保険金申請の「5ステップ」
では、もし本当に台風による損傷が疑われる場合、どうすれば安全に申請できるのでしょうか。以下のステップを、必ず順番通りに踏んでください。
- ステップ①:ご自身の「保険証券」を確認する
- まず、ご加入の火災保険に**「風災」**の補償が含まれているかを確認します。また、自己負担額(免責金額)がいくらに設定されているかも見ておきましょう。
- ステップ②:「信頼できるリフォーム業者」に被害状況の調査を依頼する
- **ここが最重要です。**突然来た訪問販売業者ではなく、ご自身が「もし普通に塗装を頼むなら、この会社かな」と思えるような、地元の信頼できる業者に連絡を取り、「台風による被害がないか、プロの目で点検してほしい」と依頼します。
- ステップ③:「ご自身で」保険会社へ第一報を入れる
- 業者による点検で、災害による損傷の可能性が高いと判断されたら、次は必ず契約者であるH.T様ご自身が、保険会社の事故受付窓口に電話をします。「〇月〇日の台風で、屋根に被害を受けた可能性がある」と、第一報を入れてください。
- ステップ④:必要書類を準備し、提出する
- 保険会社から送られてくる請求書類に記入し、業者に作成してもらった**「被害状況の写真」と「修理見積書」**を添えて提出します。この書類作成は、業者が全面的にサポートしてくれます。
- ステップ⑤:保険会社の「損害鑑定人」による調査
- 後日、保険会社から派遣された第三者の専門家(鑑定人)が、実際に家に来て被害状況を調査します。この調査結果に基づき、最終的な保険金の支払額が決定されます。
要注意!「保険金申請サポート」を謳う業者の危険な手口
H.T様が遭遇されたような業者は、この正攻法を無視して、施主の不安を煽り、契約を急がせようとします。以下の言葉が出てきたら、危険なサインです。
- 危険なセリフ①:「無料で申請を代行します」
- 保険金の請求は、契約者本人が行うのが大原則です。業者はあくまで「サポート」する立場。「代行」という言葉を使い、主導権を握ろうとする業者には注意が必要です。
- 危険なセリフ②:「必ず保険金がおります」「自己負担ゼロでできます」
- 最終的な判断を下すのは保険会社です。業者が支払いを「保証」することは絶対にできません。無責任な断言で契約を誘うのは、悪質な業者の典型的な手口です。
- 危険なセリフ③:「保険金が下りたら、必ずうちで工事してください」と、先に契約を迫る
- 保険金がいくら下りるか分からない段階で、高額な違約金が設定された工事契約を結ばせる手口です。絶対にサインしてはいけません。
- 危険なセリフ④:「保険金が下りたら、手数料として〇〇%いただきます」
- 修理費用とは別に、高額なコンサルティング料や手数料を請求する業者もいます。修理を依頼する業者であれば、見積もり作成などは工事費用に含まれるのが一般的です。
火災保険の申請は、あくまで**「被災したお住まいを、元の状態に戻す」**ための制度です。これを悪用して「ついでに家全体をキレイにして儲けよう」と考える業者には、絶対に関わってはいけません。
まずはご自身の保険内容を確認し、信頼できる地元のプロに相談する。その順番を、くれぐれもお間違いなく。

