お客様からのご相談
【東京都世田谷区・S.K様(40代・ご夫婦)】
はじめまして。築13年の家で、外壁の汚れが気になり始めたため、壁の塗装だけをお願いするつもりで見積もりを取りました。予算は120万円ほどで考えていました。
業者さんの人柄も良く、信頼できそうなのですが、一点だけ悩んでいます。
現場を見てもらった際に、「S.K様、せっかく足場をかけるのですから、一緒に屋根とベランダの防水工事もやっておいた方が、絶対に良いですよ」と強く勧められたのです。
提示された見積もりは2パターンありました。
- Aプラン(外壁塗装のみ):115万円
- Bプラン(外壁+屋根塗装+ベランダ防水):165万円
担当者さん曰く、「足場代だけで20万円ほどかかります。もし5年後に屋根だけを別に工事したら、また足場代がかかって、トータルではもっと高くなりますよ」とのこと。
その理屈は、頭ではよく分かります。しかし、住宅ローンも返済中で、いきなり予算を45万円もオーバーするのは正直厳しいです。
この「ついで工事」の提案は、本当に我が家のためを思った親切心なのでしょうか。それとも、単価を上げるための営業トークなのでしょうか。屋根やベランダの工事が、本当に“今すぐ”必要なのか、私たち素人には判断がつきません。賢い判断基準を教えてください。
AI館長・塗田がお答えします!
S.K様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。
これは、見積もり段階で非常に多くの方が直面する、悩ましい問題ですね!
「せっかく足場をかけるのだから」——。
この言葉は、非常に合理的で理にかなっているだけに、断りにくい“魔法の言葉”でもあります。業者さんの提案が、本当に親切心からなのか、それとも単なる営業なのか、疑心暗鬼になってしまいますよね。
ご安心ください。そのお悩みを解決する鍵は、**「長期的な費用」と「工事の緊急度」**という2つの物差しを、冷静に使い分けることです。今日は、そのための具体的な判断基準をご案内します。
大原則:「足場の費用」は一度きりが絶対にお得
まず、業者さんの言っている「足場があるうちに一緒にやった方がお得」というロジック。これは、紛れもない事実です。
一般的な30坪程度のお宅の場合、足場の設置と解体にはおよそ15万円~25万円の費用がかかります。これは、外壁だけを塗る場合でも、屋根と外壁を一緒に塗る場合でも、ほとんど変わりません。
仮に、今回Aプラン(115万円)を選び、5年後に屋根の塗装(仮に50万円)とベランダの防水工事(仮に15万円)を別で行ったとしましょう。その際には、再度、足場代(約20万円)が必要になります。
- 別々に工事した場合の合計金額115万円(今回の外壁) + 50万円(将来の屋根) + 15万円(将来のベランダ) + 20万円(将来の足場) = 200万円
- 今回まとめて工事した場合の合計金額165万円
その差は35万円。長期的に見れば、まとめて工事した方が圧倒的に費用を抑えられる、というのは間違いありません。
しかし、これはあくまで「費用」だけの話。もう一つの重要な物差しが**「緊急度」**です。
本当に“今”やるべき?工事の「緊急度」を見極める3段階レベル
いくらお得でも、まだやる必要のない工事を、無理して予算オーバーしてまで行うことはありません。お住まいの状態を、以下の3段階のレベルに当てはめて、冷静に判断してみましょう。
- レベル3【緊急度:高】すぐに対処すべき状態
- 症状の例: 屋根のスレートに明らかなひび割れや欠けがある、ベランダの床下(軒天)に雨染みのようなものが見える、など。
- 判断: これらは、建物の防水機能が損なわれているサインです。放置すれば、雨漏りから建物の内部(躯体)の腐食へと繋がり、結果的に何倍もの修理費用がかかる可能性があります。この場合は、予算を工面してでも、同時に工事を行うことを強くお勧めします。
- レベル2【緊急度:中】数年以内の対処が望ましい状態
- 症状の例: 屋根全体が白っぽく色褪せている、コケや藻が広範囲に発生している、ベランダの表面(トップコート)が粉っぽくなったり、部分的に剥がれたりしている、など。
- 判断: 防水機能が完全に失われたわけではありませんが、部材の寿命が近づいているサインです。最も経済合理性が高いのは、今回同時に工事してしまうことです。しかし、どうしても予算が厳しい場合は、2~3年延期することも不可能ではありません。
- レベル1【緊急度:低】今回の工事では見送っても良い状態
- 症状の例: 業者からの指摘が「築13年ですから、そろそろですね」といった年数だけを根拠にしており、目に見える深刻な劣化症状がない場合。
- 判断: 緊急性は低いです。今回は当初の予定通り、外壁塗装に集中し、屋根やベランダは次回のメンテナンス(5~7年後など)に回す、という判断で全く問題ありません。
予算オーバー時の「賢い選択肢」と交渉術
もし、ご自宅の診断レベルが「中」で、「本当は一緒にやった方が良いんだろうけど、予算が…」という場合。諦める前に、以下の3つの選択肢を業者さんに相談してみてください。
- 選択肢①:塗料のグレードを調整して、予算を再配分する
- 伝え方: 「ご提案の通り、屋根も一緒にやりたいのですが、予算が厳しくて…。もし、外壁の塗料のグレードを一つ下げた場合、その差額で屋根の塗装を追加する、といったプランは組めませんでしょうか?」
- これは、全体の性能を少し下げてでも、最大の懸念である「足場代の重複」を避けるための、最も賢い交渉術の一つです。
- 選択肢②:リフォームローンなどの利用を検討する
- 金利の負担は発生しますが、将来的に20万円の足場代を再度払うことと比較すれば、ローンを利用した方がトータルで安くなる場合もあります。業者によっては、低金利のローンを用意している場合もあります。
- 選択肢③:正直に予算を伝えて、最善策を一緒に考えてもらう
- 伝え方: 「ご提案のBプランが理想なのは重々承知なのですが、どうしても総額140万円が上限なのです。この予算内で、外壁を最優先しつつ、屋根やベランダに今できる最善の処置を盛り込むことはできませんでしょうか?」
- 信頼できる業者であれば、親身になって代替案(屋根は全面塗装ではなく、部分補修と劣化の進みにくい塗料を塗る、など)を考えてくれるはずです。
「ついで工事」の提案は、多くの場合、業者さんの親切心やプロとしての合理的な判断から来ています。大切なのは、その提案にプレッシャーを感じるのではなく、専門家の診断結果として冷静に受け止め、ご自身の予算という現実と照らし合わせ、最終的な優先順位をご自身で決定することです。
自信を持って、ご家族にとって最適なメンテナンスプランを組み立ててくださいね。

