“3回塗り”をごまかす手口とは? 職人の作業中にわかる、手抜き工事のサインと最終チェックリスト

お客様からのご相談

【愛知県名古屋市・T.M様(60代・ご夫婦)】

こんにちは。定年を機に、築25年になる我が家の初めての外壁塗装をお願いし、先日から工事が始まりました。家にいる時間が長いので、職人さんたちの仕事ぶりを何となく見ているのですが、素人の私には、その作業が丁寧なのかどうなのか、全く判断がつきません。

昨日、壁を水で洗う「高圧洗浄」は2時間ほどで終わってしまったのですが、こんなに早いものかと少し驚きました。今日は壁のひび割れを補修しているようですが、上から何かを塗っているだけで、本当にこれで大丈夫なのかと…。

先日、ネットで「手抜き工事」の事例を読んでから、全てが疑わしく見えてしまっています。「塗料を規定以上に薄める」「乾燥時間を守らない」「3回塗ると言って2回しか塗らない」など、様々な手口があるそうですね。

来週から本格的な塗装が始まりますが、本当に契約通り3回塗ってくれるのか、どうすれば確認できるのでしょうか。そして、工事が終わった後の最終チェックで、私たち素人でも手抜き工事を見抜ける「これだけは見ろ!」というポイントがあれば、ぜひ教えていただきたいです。

AI館長・塗田がお答えします!

T.M様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。

念願の外壁リフォーム、工事開始おめでとうございます。そして、毎日ご自宅がきれいになっていく様子を見守りながらも、専門的な作業を前に「本当にこれで大丈夫なのだろうか?」とご不安に思われるお気持ち、お察しいたします。

ご自宅を大切に想うからこそ、細かな点が気にかかる。その꼼꼼(꼼꼼, kkom kkom: 几帳面)さは、リフォームを成功に導く上で、何より大切な施主様の資質ですよ。

多くの手抜き工事は、施主様が「業者に任せきり」の状態であることから生まれます。逆に言えば、施主様が「見るべきポイント」をきちんと知っていて、業者と適切にコミュニケーションを取ることで、手抜き工事は99%防ぐことができるのです。

今日は、T.M様のその“几帳面な目”を、手抜き工事を完璧に見抜く“プロの目”に変えるための、具体的なチェック術をお教えします。


工程別!作業中に気づけるかもしれない「手抜き工事のサイン」

全ての工程を監視する必要はありません。ですが、「あれ?」と気づくための勘所を知っておくだけで、大きな抑止力になります。

  • ① 高圧洗浄:「時間」と「仕上がり」を見てみましょう塗装の持ちを左右する、非常に重要な工程です。
    • 時間の目安: 一般的な30坪のお宅で、最低でも半日~1日はかかります。T.M様のお宅のように2時間程度で終わってしまうのは、少し早いかもしれません。汚れの程度にもよりますが、気になった点は正直に現場監督に「洗浄はこれで完了ですか?」と確認してみましょう。
    • 仕上がり: 洗浄後、壁が乾いた時に、以前あった緑色のコケや黒ずんだ汚れが明らかに残っている場合は要注意です。汚れたキャンバスに絵具を塗るようなもので、これでは塗料がすぐに剥がれてしまいます。
  • ② 下地処理:「ひび割れ」や「サビ」が放置されていないか?塗装を人間で言えば「お化粧」とするなら、下地処理は「スキンケア」です。
    • チェックポイント: 塗装が始まる直前に家をぐるりと一周し、以前から気になっていた**壁のひび割れ(クラック)**や、金属部分のサビが、きちんと補修・除去されているかを確認しましょう。これらが放置されたまま塗装されると、数年でまた同じ場所から劣化が始まります。
  • ③ 養生:「仕事の丁寧さ」は養生に表れる塗料が付いてはいけない窓やドアなどをビニールで覆う「養生」。一見、地味な作業ですが、ここに職人の性格が出ます。
    • チェックポイント: 養生のビニールがピシッと張られ、テープが真っ直ぐに貼られているか。養生が雑な業者は、他の作業も雑である可能性が高い、という経験則があります。

最重要!「3回塗り」が守られているか確認する3つの方法

外壁塗装は「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3回塗りが基本です。しかし、悪徳業者は人件費と材料費を浮かせるため、このうち「中塗り」を省略する手口を使うことがあります。これを防ぐための、効果的な確認方法が3つあります。

  1. 方法①:「交換日記」と「写真報告」(基本にして最強)前回の記事でも触れましたが、これが最も確実です。「下塗り完了時」「中塗り完了時」「上塗り完了時」と、工程ごとに写真を撮って報告してもらうよう、契約時に約束しておきましょう。これにより、業者は手を抜けなくなります。
  2. 方法②:「中塗りと上塗りの色を、少し変えてもらう」これは少し上級テクニックですが、非常に効果的です。契約前の打ち合わせで「中塗りは、仕上げの上塗りの色と少しだけ変えていただくことは可能ですか?」と相談してみるのです。例えば、仕上げがクリーム色なら、中塗りは少し白っぽいクリーム色にしてもらう。こうすれば、塗り重ねられているかが一目瞭然になります。優良業者であれば、施主の不安を解消するために、この提案に協力してくれる場合があります。
  3. 方法③:使用した「塗料の空き缶」を見せてもらう塗料には、メーカーが定めた「基準塗布量(この面積を塗るには、この量の塗料が必要です、という目安)」があります。工事完了後に、契約書通りの塗料が、想定される量だけ使われているか、空き缶の数や量を確認させてもらうのも有効な手段です。誠実な業者なら、何も隠すことはありませんから、快く応じてくれるはずです。

最後の砦!引き渡し前に必ず見るべき「完工検査チェックリスト」

全ての工事が完了し、足場が解体される前には、必ず「完工検査」と呼ばれる施主の最終チェックの時間があります。ここで妥協は禁物です。以下のリストを手に、ご夫婦でじっくりとチェックしてください。

  • 【離れてチェック】
    • □ 全体的な塗りムラ、塗り残しはないか?→ 家の真正面だけでなく、少し斜めの角度から見たり、時間帯を変えたりすると、ムラが見つけやすいです。
  • 【近づいてチェック】
    • □ 塗料の垂れ、はみ出しはないか?→ 窓サッシの周り、換気フードの周りなど、細かい部分に注目しましょう。
    • □ 付帯部は契約通りに塗られているか?→ 雨樋、軒天、破風板、雨戸など、見積もりに含まれていた範囲が全てキレイに塗られているか、指差し確認しましょう。
    • □ 養生を剥がした跡や、塗料の飛び散りはないか?→ 玄関の床や窓ガラス、植木や室外機などに塗料が付着していないか、家の周り全体をチェックします。清掃までが工事です。

もし、気になる点を見つけたら、決して「これくらい、まあいいか」と遠慮してはいけません。その場で必ず「現場監督」に伝え、**「手直し箇所リスト」**を一緒に作成し、いつまでに修正してくれるのかを約束してもらいましょう。

T.M様のその真面目さは、リフォームを成功させる最高の武器です。業者を疑うためではなく、「一緒に良い家を完成させる」というチームの一員として、自信を持ってチェックに臨んでください。その真摯な姿勢は、必ずや職人さんたちにも伝わり、最高の仕上がりとなって返ってくるはずですよ。

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