お客様からのご相談
【千葉県市川市・H.K様(50代・ご夫婦)】
こんにちは。外壁と屋根の塗装を考え、3社から相見積もりを取ったのですが、各社の提案と金額がバラバラで、どう判断すれば良いのか完全に分からなくなってしまいました。
- A社: シリコン塗料で 110万円。一番安いですが、説明は少し大雑把な印象です。
- B社: ワンランク上のラジカル制御型塗料で 135万円。説明は丁寧で、塗料の性能を熱心に語ってくれました。
- C社: 「30年持ちます」という最高級のフッ素塗料で 170万円。
一番安いA社と高いC社では60万円もの差があり、一体何が違うのか…。また、見積書には「ケレン」や「付帯部塗装一式」など、よく分からない項目も多く、この価格差が品質の差なのか、単なる利益の差なのか、私たち素人には全く見抜けません。
一番安い業者に頼んで手抜き工事をされるのは怖いですが、一番高い業者の言う通りにするのも、本当に我が家に必要なのか疑問です。
契約した後に「あれもこれも別料金です」と追加費用を請求されるのも絶対に避けたいです。
「我が家にとって最適な塗料と価格」を見極めるための基準と、後からトラブルにならないための「見積書の正しいチェック方法」を、具体的に教えていただけないでしょうか。
AI館長・塗田がお答えします!
H.K様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。
相見積もり、お疲れ様でございます。複数の業者から話を聞くのは、失敗しないための王道ですが、おっしゃる通り、比較すればするほど「なぜこんなに違うんだ?」と、かえって混乱の迷路に迷い込んでしまうことも少なくありません。そのお悩み、非常に多くの方が経験される道ですので、ご安心ください。
見積書は、単なる価格表ではありません。それは、**「その業者が、H.K様のお住まいをどう診断し、どんな未来を提案しているかを示す、思想の表れ」**なのです。
価格の裏側にある「価値」を正しく読み解く方法さえ知れば、H.K様ご夫妻にとって、最も納得のいくパートナーが誰なのか、必ず見えてきます。今日は、そのための「見積書の翻訳術」を伝授いたしますね。
なぜ価格が違う?見積もり額を左右する「3つの要素」
まず、A社とC社で生じている60万円もの価格差。この大きな違いは、主に3つの要素の組み合わせによって生まれています。
- 塗料のグレード(材料費)これが価格差の最も大きな要因です。塗料は、スマホの機種のように様々なグレードがあり、価格と耐久性(耐用年数)が大きく異なります。
| 塗料の種類 | 耐用年数の目安 | 特徴 |
| シリコン | 10~12年 | コストと性能のバランスが良く、最も一般的な塗料。(A社) |
| ラジカル制御型 | 12~15年 | シリコンの進化版。紫外線に強く、汚れにくい。(B社) |
| フッ素 | 15~20年 | 高価だが、非常に長持ちする。商業ビルや橋などにも使われる。(C社) |
| 無機 | 20~25年 | フッ素を超える耐久性。ガラスのような無機物を配合。 |
C社が170万円と高額なのは、材料費が最も高価なフッ素塗料を提案しているから、というわけです。
- 工事の品質(人件費・技術料)塗装工事は、塗料を塗る前の「下地処理(高圧洗浄やひび割れ補修、古い塗膜を削るケレン作業など)」が、仕上がりの9割を決めると言われるほど重要です。また、塗料の性能を最大限に引き出すには、「下塗り・中塗り・上塗り」の3回塗りを、メーカーが定めた乾燥時間を守って丁寧に行う必要があります。A社の110万円という価格は、もしかすると、この見えなくなってしまう部分の工程や人件費を、ギリギリまで切り詰めている可能性も考えられます。
- 会社の経費(利益・管理費など)会社の規模によって、広告宣伝費や営業マンの人件費、現場を管理する監督の人件費なども見積もりに含まれます。B社が中間の価格帯なのは、高品質な工事と丁寧な管理体制を維持するための、適正な経費と利益を確保している結果と読み解くことができます。
我が家に最適な塗料は?「ライフサイクルコスト」で考えましょう
「では、結局どの塗料を選べばいいの?」という疑問が湧いてきますよね。その答えは、**「H.K様ご夫妻が、このお住まいにあと何年くらい、快適に住み続けたいか?」**というライフプランの中にあります。
ここで重要になるのが**「ライフサイクルコスト」**、つまり長期的な視点でのコストパフォーマンスです。1年あたりのコストを計算してみましょう。
- A社(シリコン):110万円 ÷ 耐用年数10年 = 1年あたり 11万円
- C社(フッ素):170万円 ÷ 耐用年数20年 = 1年あたり 8.5万円
いかがでしょうか。初期費用はC社の方が60万円も高いですが、もし20年以上このお住まいに住むのであれば、1年あたりのコストはC社の方が安くなるのです。逆に、10年後には住み替えや建て替えの可能性があるのなら、高価なフッ素塗料は過剰投資となり、A社のシリコンで十分という判断になります。
B社が提案するラジカル制御型塗料(耐用年数12~15年)は、シリコンより長持ちし、フッ素よりは安い。まさに、両者の中間に位置するバランスの取れた選択肢と言えるでしょう。
“追加料金ゼロ”を実現する!見積書のチェックポイント5選
最後に、契約後の「話が違う!」という最悪の事態を避けるため、見積書のどこを、どうチェックすれば良いのか、具体的なポイントをお伝えします。
- ✅ 「〇〇一式」は要注意! 必ず内訳を確認する「付帯部塗装 一式」「下地処理 一式」といった項目は、トラブルの元です。必ず「“付帯部”とは、具体的に雨樋、破風板、軒天、水切り金具のことですか?」と質問し、工事範囲に含まれるものを全て書き出してもらいましょう。
- ✅ 塗装面積は「㎡(平米)」で記載されているか?信頼できる業者は、建物の図面から、あるいは実測して正確な塗装面積を算出します。「一棟まるごと」といった曖昧な表記ではなく、「外壁塗装面積:〇〇㎡」「屋根塗装面積:〇〇㎡」と、数量が明確に記載されているかを確認してください。
- ✅ 最重要!「シーリング(コーキング)工事」は含まれているか?サイディング外壁の場合、塗装と同じくらい、ボードの継ぎ目を埋めるシーリングのメンテナンスが重要です。古いシーリングを撤去して新しく打ち替える「打ち替え」なのか、上から補充する「増し打ち」なのか、工事の方法と費用が明確に記載されているかは、必ず確認してください。ここを曖昧にする業者は要注意です。
- ✅ 見積もりの「有効期限」は不当に短くないか?「本日中のご契約なら…」は論外ですが、「有効期限:1週間」など、あまりに短い期限を設定して契約を急かす業者は、お客様に考える時間を与えない意図があるかもしれません。最低でも2週間~1ヶ月程度の有効期限があるか確認しましょう。
- ✅ 「追加料金が発生するケース」を正直に話してくれるか?優良な業者は、リスクについても正直に話してくれます。「足場を組んでみないと分からない、想定外の劣化が見つかった場合は、ご相談の上で追加費用が発生する可能性があります」と、事前に可能性を説明してくれるかを確認し、その場合の対応についても話し合っておきましょう。
見積書とにらめっこする時間は、少し骨が折れるかもしれません。しかし、このひと手間が、10年後、20年後の満足度を大きく左右します。H.K様ご夫妻の堅実な視点で、価格の背景にある価値をじっくりと見極め、最高のパートナーを見つけてください。

