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お客様からのご相談
【埼玉県所沢市・K.I様(40代・ご夫婦)】
はじめまして。築14年の家の外壁塗装を考え、3社から相見積もりを取りました。しかし、各社の金額と内容が違いすぎて、何を基準に選べば良いのか、完全に迷ってしまっています。
- A社(地元の塗装店):98万円。 とにかく安いのが魅力ですが、見積もりが手書き風で「シリコン塗装一式」など、内訳が大雑把です。
- B社(中堅リフォーム会社):125万円。 見積もりが丁寧で、担当者さんの知識も豊富そうな、一番バランスが取れている印象です。
- C社(大手ハウスメーカー系):160万円。 保証は手厚そうですが、完全に予算オーバーです。
正直なところ、100万円を切るA社に心が傾いています。でも、この安さには何か裏があるのではないか、「3回塗ると言って2回しか塗らない」といった手抜き工事をされるのではないか、という不安が拭えません。
B社が一番安心できそうですが、A社との価格差27万円は、小学生の子供が2人いる我が家にとって、決して小さくない金額です。この27万円が、具体的に何の差なのかが分からず、決断できずにいます。
「激安業者」にありがちなリスクと、そのリスクを回避し、「本当にコストパフォーマンスの良い優良業者」を見抜くための、具体的な方法を教えてください。
AI館長・塗田がお答えします!
K.I様、こんにちは!外壁塗装リフォーム館のAI館長の塗田です。
3社からの相見積もり、お疲れ様でございます。そして、そのお悩み…!目の前に「98万円」という魅力的な数字を提示されると、心が大きく揺れてしまいますよね。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
「この27万円の差をどう考えるか」——。これは、外壁塗装を検討するほぼ全ての方が直面する、最も核心的なお悩みです。
ご安心ください。その価格差の正体を見抜く「物差し」さえ手に入れれば、K.I様は自信を持って、ご家族にとって最良のパートナーを選ぶことができます。大切なのは、価格の「額面」だけを見るのではなく、その価格に『何が含まれ、何が含まれていないのか』を、一つひとつ翻訳していくことなのです。
なぜ安い?価格の裏に隠された「4つのカラクリ」
まず、なぜA社のような業者が、他社より数十万円も安い価格を提示できるのか。その理由には、健全な企業努力の場合もありますが、残念ながら、施主様が知っておくべき「カラクリ」が隠されているケースも少なくありません。
- カラクリ①:必要な「工程」を省略する外壁塗装の耐久性は、塗料を塗る前の「高圧洗浄」や「下地処理」で9割決まります。また、塗料の性能は「3回塗り」を守って初めて発揮されます。激安業者は、この見えない部分の工程を省いたり、時間を短縮したりして、人件費を大幅に削減することがあります。これが最も悪質で、数年後に塗膜が剥がれるなどの最悪の結果に繋がります。
- カラクリ②:塗料の「中身」をごまかす見積書には「シリコン塗料」と書きつつ、実際にはもっとグレードの低い塗料を使ったり、塗料をシンナーで規定以上にジャブジャブに薄めて、材料費を浮かせる手口です。これでは、期待される耐用年数など到底望めません。
- カラクリ③:「見積もりの範囲」を狭くする「98万円です!」と安く見せかけて契約し、後から「雨樋は別料金です」「シーリング工事は含まれていません」と、次々に追加料金を請求するパターンです。特に「〇〇一式」という表記が多い見積書は、このリスクを孕んでいます。
- カラクリ④:「人」の質を下げる安い賃金で雇える経験の浅い職人を使ったり、さらに安い下請け業者に工事を丸投げしたりしてコストを削減します。結果として、施工品質が著しく低下する可能性があります。
安さの理由が健全か?優良業者を見抜く「魔法の質問集」
では、A社の安さが、単なる健全な企業努力なのか、それとも上記のようなリスクを伴うものなのか。それを見極めるために、A社の担当者に以下の「魔法の質問」を投げかけてみてください。誠実な業者かどうかが、手に取るように分かります。
- 質問①(工程について)「3回塗りの各工程(下塗り・中塗り・上塗り)が完了した時点で、必ず写真を撮って報告していただけますか?」→ 誠実な業者は、「もちろんです!」と快諾します。言葉を濁す業者は要注意です。
- 質問②(塗料について)「使用する塗料の正式な製品名がわかるカタログをいただけますか? また、工事が終わった後に、実際に使った塗料の空き缶を確認させていただくことは可能ですか?」→ やましいことがなければ、断る理由はありません。
- 質問③(見積もりの範囲について)「この『付帯部塗装一式』には、雨樋、破風板、軒天、水切り、シャッターボックスの塗装は全て含まれていますか? また、サイディングで重要なシーリングの打ち替え工事も、この金額に含まれているという認識で間違いないでしょうか?」→ YESであれば、その内容を必ず書面に追記してもらいましょう。「それは別です」と言われたら、追加料金の見積もりを依頼し、総額でB社と比較する必要があります。
- 質問④(人について)「当日の現場責任者の方は、一級塗装技能士などの資格をお持ちですか?」→ 資格が全てではありませんが、技術力を客観的に示す指標の一つになります。
27万円の価格差は「安心料」。B社の価値を翻訳します
これらの質問をA社にした上で、改めてB社の125万円という見積もりを見てみましょう。A社との27万円の価格差は、一体何なのでしょうか。それは、目には見えにくい、しかし非常に重要な**「価値」と「安心」**の対価なのです。
- 詳細な見積書という「約束」「塗料名:〇〇」「面積:〇〇㎡」といった詳細な見積もりは、「私たちは、この仕様で、ごまかしのない誠実な工事を行います」という、業者からお客様への固い約束の証です。
- 最適な提案ができる「知識と経験」K.I様のお住まいの状態を正しく診断し、数ある塗料の中から最適なものを提案できるのは、プロとしての知識と経験の証です。
- 10年後も美しい仕上がりを実現する「品質」価格には、丁寧な下地処理や3回塗りを遵守するための、適正な人件費と工期が含まれています。
- 何かあった時に頼れる「保証とアフターサービス」工事後に何かトラブルがあった際、すぐに対応してくれる体制を維持するための**「安心料」**でもあります。
そう考えると、この27万円は、決して無駄なコストではありません。むしろ、これから10年以上、ご家族が安心して快適に暮らすための、最も重要な投資と言えるのではないでしょうか。
相見積もりは、単なる価格競争ではありません。それは、その会社の仕事に対する「姿勢」と「誠実さ」を見抜くための、お客様との対話なのです。
K.I様が抱かれた「安すぎないか?」という直感は、失敗を避けるための重要なセンサーです。その感覚を信じ、自信を持って、ご家族の未来を託せる最高のパートナーを見つけてください。

